「考えない、感じることについて」 ~大切な人がうつ病になったら~③


◆③:ズル休みじゃないんだけど◆



メムさん

……晴れてきたなぁ。

風も出てきたから、過ごしやすい。



――お。こちらが、お話しされていた二十間坂でしょうか。



メムさん

そうですそうです。

昔、このあたりは函館大火でなんども燃え広がって、焼け野原になったんですよ。

それから、火が建物に燃えうつらないように、こうやって道の幅を広く取ったんです。

それで、20間(約36メートル)もの道になったそうで。



――なるほど。広々として、なんとも美しい坂道です。





――教会へ向かいながら、先ほどのお話の続きを。<問題児>だったメムさんですが、高校を卒業したあとは、企業にお勤めになられたんですよね。



メムさん

勉強大っ嫌いだったんで、高校でさえ、なんで受かったかわからない……

学生の時でそんなんだったんで、社会には馴染めなかったんですね。


高校を卒業してから、とある有名レストランで勤めることになったんですけど、

もうぜんぜん勤まらなかったです。今までずっと自分のペースでやってきたんで、

周りに合わせられないんです、本当に。ああしなさい、こうしなさいって言われても、

理解できなければ、もうできない、みたいな。


なのでぜんぜん動けないし、店が混んでくるとわからないし、

誰に聞けばいいのかもわからないし。ストレス溜まりまくって、

出勤する途中で足が動かなくなって、パニックになって泣いたことありますね。

もうちょっとだけ歩けば会社に着くのに、その手前で足が動かなくて、

どうしていいかわからなくて、会社にもいけないし家にも帰れないしで。


結局、その日はずっと時間を潰してたんですけど、

あとで会社から家に連絡が行っちゃって、バレてすごい怒られて。

『なんでズル休みしたんだ!』って。




夫さん

ズル休みじゃ、ないんだけどねぇ……


メムさん

うん。でも、その時は周りに説明できなかったんです。

あとあと、日が経ってから言えるようになっていきましたけど、

その時は追い詰められてたんで。当時は発達障害の診断とか、されてなかったんで。



――働けなくなった後、発達障害の診断を受けたのですか?



メムさん

結局、発達障害だとわかるのは、それから10年くらい経ってからなんです。

診断を受けたのは、ここ4、5年のことなので。


まず最初は、これはなんかおかしいと思って。自分で病院行ったんですよ。

病院の窓口で精神科を紹介されて、うつ病ですね、って。

でもそこの先生が適当で、薬は出してくれるんですけど、

特にこれといったカウンセリングとかもなくて。




そうして誤診とかもあったりして、薬漬けになっていた時期があって。

その頃は、死んだ魚の眼をしてたとか、身体から薬の匂いがしてたとか

家族に言われてましたね。当時は、治療方針というものが無い、というレベルで。

症状を言うと五分診療で薬を増やされて、改善しないからまた増やされての繰り返し。


薬の量が多すぎて手の施しようがないからって、かかりつけだった内科医の先生が

紹介してくれたのが、いま通っている病院で。

そこで薬を減らす方針にしてもらって、なんとか頭が回るようになっていって。

その先生から、発達障害の診断を受けて、やっと今に至る、って感じですかね。



――メムさんと同年代の方からお話を聞くと、『最初にいいお医者さんに巡り会えなかったために、症状が悪化しつづけた』というお話をよく耳にします。



メムさん

改善しなくても、病院を変えようという考えは浮かばなかったですね。

当時は、思考がまったく停止している状態だったので。


……あ。こっちの道を通って行きましょうか。



――はい……あ。道が石畳になっていて、すごくいい雰囲気の街並みですね。



メムさん

そうなんです。このあたりは、古い建物が多いんです。



――建物に、 < 歴史的建造物指定 > の表示がありますね。



メムさん

ここも、あっちの建物も指定されてますね。



――いろんな花が咲いてて、すごくいいところですね。……こういうところで

カフェを開いて、のんびり暮らしてみたいです。





メムさん

ここ、カフェ多いんですよー。



――あ、やっぱりそうなんですね。すでにライバルが。(笑)いやぁ、本当に素晴らしい

街並みです。



メムさん

あの風見鶏が、目指しているカトリック教会の目印なんです。

その次に行くとこはハリストス正教会。通称ガンガン寺。

それぞれ、屋根の形がちがってるんです。



――なんだか絵本のような、幻想的な雰囲気です。



メムさん

はい、私、初めてこの教会に入った時、涙が止まらなくて。

言葉にならないくらい感動したんです。



――なるほど。……ただ、せっかくなのですが、教会の中は撮影禁止なんだそうです。



メムさん

ありゃ。どうします?



――はい。取材前から、どうしたものかと考えてまして。そこで、今日の取材のテーマが「考えない、感じることについて」ということなのですが。



メムさん

そうでしたねぇ。



――読んでいただいた方に、函館の様子を説明するのではなく、感じてもらうことはできないか、と考えていたんです。そんな折に、メムさんから『詩を書くのが好きだ』という

お話をうかがいまして。……そこで思いついたのですが、豊嶋さんの写真を元にして、メムさんに詩を書いていただいて、説明できないところはそれを挿入させてもらえないかなと。



メムさん

あはは、詩ですか?(笑)



――はい。そうすることが、今日のことをいちばん正しく伝えられる気がしまして。



メムさん

なるほど。(笑)

わかりました、やってみましょうか。




その④へ、つづきます。


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