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【特集取材】うつサポートは「搾取」か、「献身」か? ⑧

前回までの記事は、こちら。

①:「私はうつの夫に、人生を搾取されている」

②:苦しくても、楽しかった

③:もうそろそろ離婚かな

④:この人が怖い、この人から逃げたい

⑤:自尊心なのかもしれない

⑥:ぜんぜん辛くない

⑦:一番大事なものやから



 

◆⑧:違和感を感じていた◆




……そういった、かなり危険な状態から、薬を変えたことによって、ぐんぐん調子を取り戻されて。2017年ごろまで幸せ度が急上昇していきます。



夫さん

ぎゅーん、てあがっちゃいました。

デイケアも卒業してから、障害者職業センターっていうのがあるんですけども、

そこでリハビリ、仕事をやっていくリハビリですね。まずあなたは、

こういう性格の人ですね、みたいなのカウンセリングして、基本的な仕事から

やっていって、で、仕事を間違いなく、落ち着いてできる方法を

自分で気づいていって、少しずつやっていったり。


あとは、ストレスのお勉強ですね、ストレスとは一体なんなのか、

ストレスを解消するとして、いろんな方法があります、

そのなかで日常の行動に焦点をあてたものとして行動認知療法があります、

じゃあそれを練習していきましょうか、っていう。


そういう風にストレスに対する、処置の方法をいろいろ学べて。

で、「あ、ここまでいけたらいけるかな」っていうことで、仕事を始めた。

で、仕事行って「あ、いけるじゃん!」っていうので、びゅーっとこう。



――仕事を再開できたという、喜びがあったのですね。



夫さん

うん、うん、5日、フルで。

ま、工場で、そんな難しい仕事じゃないんですけども、

「いける、いける、少なくとも、人と同じくらいは覚えてるー」みたいな。

精神的なのもぜんぜん。仕事もほぼストレスフリーみたいな感じで。



――障害者職業センターで学べたことは、大きかったのですね。



夫さん

いろいろと学べたと思いますね。

認知の歪みを、できるだけ自分の中で冷静に判断して、除いていく。

職場で何か厳しいことを言われても、「仕事を教えようとしてくれてるんや」と。

そうやってポジティブに受け止めることで、ストレスってたまらないよね、って。



――認知の歪みや、ストレスマネジメントについて学んでいくことで、順調に社会復帰ができ、幸せ度も上がってきた、ということですね。



――お話を聞かせていただいて、ありがとうございます。ではここに、

<妻さんが予想する夫さんの幸せ度>を重ねたグラフが……



夫さん

ぎゃあああああ(笑)



――まだ出してません。(笑)妻さんの予想を加えたグラフが、こちらです。



夫さん

おお……


妻さん

ほぼほぼ、あってる?


夫さん

うん……


妻さん

でも。ちょっと、ちゃうんやな……


夫さん

……あ、そうなってるんや……



――大きな形は似てるようですが、ずれているところもあるようです。



妻さん

だいたい……誤差やろ。(笑)



――(笑)……結婚されてすぐの頃が、少しずれていますね。



妻さん

お金はなかったかもしれないけど、夫はわりとノホホン、てしてたんで。

心の中では、焦ってたんかもしれんけど。

そのとき夫は、焦ってる様子を一切、私には見せなかったですね。

私が、ひとりで焦ってたくらいかな。



――2005年が……



夫さん

なんで90おうてるん。(笑)



――そうですね、ここはぴったりです。(笑)そこから、真逆に走ったのが2007年ですね。



――夫さんは絶好調だったのに、妻さんは、ここはがくん、と半分近くに下がっているのではないか、と予想しています。



妻さん

あのね、会社では元気やったかもしれないんですけど、

うち帰ってぐったりしてたりとか、奇行があったりして、

違和感を感じていたので、たぶんそれで50にしたはずです。



――夫さんの奇行や、違和感を覚えることがあったのですか?



妻さん

やたらお金を使いたがる……鉄道模型とか、カメラとか……

私の中では「うわっ!」てくらい使われたイメージがあって。

で、なんかあの……うちも身内にうつが多いんで、確か躁病って

お金めっちゃ使うよな、って知識があって、親族がそれで自殺してるんで。



――躁状態なんじゃないかと。



妻さん

一晩で10万使うんがあたりまえやから。で、母親に連絡したら、

いやぁそこだけでは判断できへんな、っていう話になって、まぁ様子見ようと……

ストレス発散のために金を使いたいのはあるやろけど、その金の使いかたが

異常に感じたんで、うつ病を疑い始めたのはこの時期ですね。


夫さん

……たぶん、お金の話は、新しいゲームが出てパソコンを作り直したのと、

結婚式でカメラマン頼まれてたんやけどカメラが壊れてて買ったのと、

鉄道模型を始めたという、それが、多分お金使ってる、というトリガーやねん。


妻さん

プラス、調子が、家帰っても悪くて……総合して、そう判断した。


夫さん

躁病では、なかったとおもうけど。


妻さん

そうやね。「そう」だけにね。


夫さん

そうやね。ほんで……そうそうそう。

だから、お金に関しては、 先程のように言い訳さしてもらいたい。


妻さん

はいはいはい。でも、私の中では、一気にガッときた感じがしたので。

やたら金使う、おかしいなぁ。家帰ってきてもぐったりしてるけど

遊びに行きたがるし、寝りゃいいのに何で遊びに行きたがるねん、という。



――ここでまたズレがあるのですが、夫さんの仕事がなくなり、地元の近畿地方に帰った頃、夫さんに胆石の手術やストレス障害の診断があって。妻さんからすると、夫さんの幸せ度は5年ほど、低いままだったのではないか、と。



妻さん

胆石の手術したから、ストレス障害なったんかな、

っていうぐらいの勢いやったんすわ。


夫さん

厄年ですから。



――夫さんがサブリーダーとして働いている間、体調が悪い中でもジリジリと、幸せ度を上げていました。ですが、妻さんから見ると、ずっと低い状態だったのではないか、と。



妻さん

これは、この人がやつあたりをしてきてたから。

たまったストレス全てを私にぶつけてきて、

ものも投げてきて、暴言吐いて、という時期があって。


暴言吐きながら仕事に行って、また家に帰って暴言吐く、

物投げる、ご飯作っても「こんなん食えるか」って飯は食わへん。


夫さん

そんなんしてた……?


妻さん

してた。だから、この人は会社では、いい顔してるけど、

家帰ったらやつあたるんや、おかしいな……甘えてんの?

違うな……っていう、そういうのが。



――妻さんからすると、幸せではなかっただろう、と。



妻さん

外ではええかっこしいで無理して、帰ってきて八つ当たって、

私がご飯つくったのに自分でラーメンをつくって食べる……とか。

で、この人は多分、仕事のモチベーションはあがってたかもしれんけど、

なにか別の、精神的なモチベーションは下がってたんじゃないかなと。



――それから、海外出張のお仕事が終わるまではほぼ一緒なのですが、

回復のようすに対しての認識が、すこしズレているようです。



――妻さんからすると、調子はぐんぐん上がっていったのではないかと。

夫さんからすると、もう少しなだらかな印象です。



妻さん

私は仕事が忙しかったので、朝いってきます、夜ただいま、まで、

間を知らへんかったので、顔を見た時のテンションで判断してるんです。


で、あと夫がよく、うつ当事者の人たちと飲み会に行ったりして、

女の子に気前よくお金を出してあげたりもしてたから、

「この人は家計もかえりみずに、楽しんでんやろな」って。仕事はできひんけど、

趣味はできてはったから、だからイケイケなんちゃうかな、と思って。


そやね……昼間のことは知らんからね。

……うーん、私が家にほとんどいなくなってるから、仕事で。



――夫さんは最近、家事もされるようになったと。2017年くらいからでしょうか?



夫さん

それくらいかな……


妻さん

落ちてるときは私がご飯つくってたけど、徐々につくれるようになったんやな。

「私は自分のぶん食べるから、勝手に好きなもん食べて」って言ってたけど、

だんだん、晩御飯つくってくれるようになってね。



――家事をしようと思ったきっかけは、どんなことがあったのでしょう?



夫さん

えっとね……話が戻ってしまうんですけども、

入院していた大学病院で、その主治医に何言われたかというと、

「あなたが退院できる条件ってなんだと思いますか?」って聞かれたんですよ。



 

その⑨へ、つづきます。



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