◆⑮:取材を終えて◆

今回の取材では、「うつサポは、搾取か、献身か?」ということを軸にして大船さん夫妻にお話を聞かせていただきましたが、それ以外にも、考えるべきテーマがたくさん見つかった取材になったように感じています。
私は取材が終わって数週間が経った今でも、取材中に出た様々な疑問について、考え続けています。
「どうして隣にいる人の辛さを、わかってあげられないのだろう?」
「精神疾患のパートナーと治療方針がずれた時、どうすればよいだろう?」
「大切な人がうつになったとき、キャリアを止めてでも、体調を優先してもらうためにはどうすればいいだろう?」
「うつ病のリスクや、つらさについて、健康な人に少しだけ考えてもらうためには何ができるだろう?」
……他にも数多くある、うつサポに関する疑問について、私はまだ、明確な答えを持ち合わせてはいません。
ただ、ひとつだけ、今回の取材で私は、確信したことがあります。
それは、このうつサポ。を立ち上げる際に掲げた、
「うつ病は、大切なひとを深く知り、より愛せるようになれるチャンスである」
というテーマに、間違いはなかったのだ、ということです。
私は、大船さんご夫妻の取材を通して、人生の難題について、前向きに、時にはユーモアも交えながら、パートナーと共に、深く、誠実に考え続けるための、勇気と優しさを学んだような気がしています。
この記事をここまで読んでくださった皆さん。
よかったらどうか1分だけ、想像してみてください。
「自分の幸せとは、なんなのだろうか?」
「愛する人は、どんなときに幸せを感じるのだろうか?」
「パートナーが病に倒れてしまったとき、自分になにができるだろうか?」
「自分が病に倒れてしまったときに、大切なパートナーはどう感じるだろうか?」
そして、どうか心と時間に余裕があるときで結構ですので、大切な人と、あなたがいま
考えたことについて、話しあってみる時間をつくっていただければと思います。
「相手の気持ちになって、考えてみる」こと。
そんなシンプルな習慣が日常の中にあれば、大切な人が悩んでいるとき、
その苦しみを分かち合い、和らげることが、できるはずなのですから。

この特集取材は、これでおわりです。長い記事を
さいごまで読んでくださって、本当にありがとうございました。