【特集取材】うつサポートは「搾取」か、「献身」か?⑭


これまでの記事は、こちら。



①:「私はうつの夫に、人生を搾取されている」

②:苦しくても、楽しかった

③:もうそろそろ離婚かな

④:この人が怖い、この人から逃げたい

⑤:自尊心なのかもしれない

⑥:ぜんぜん辛くない

⑦:一番大事なものやから

⑧:違和感を感じていた

⑨:「病気を治すのがいまの僕の<仕事>なんだ」

⑩:<献身>の人

⑪:希望の始まり

⑫:元気になれるボディケア方をご紹介!

⑬:希望も絶望もないねん



◆⑭:種を蒔き続けないといけない◆





妻さん

ボディケアの仕事をしていると、うつじゃないかな、と感じる人が来られます。

自分の経験から言うと、うつ病は不眠症から始まるんですね。

ストレスで不眠症になって、思考力が低下して、だんだんおかしくなって

うつになる。……逆に言うなら、よく眠れればいい。


私は医者ではないから、体を温めてください、目を温めてください、

とか、眠るためのアドバイスや、ボディケアをして、

送り出すことくらいしか、できなくて……



――仮にそれで一時的に良くなったとしても、またストレス環境に戻って行ってしまう。



夫さん

根本的に解決できひんもんな。だから、どうやって身内が

それに気づいてあげれるか、どう言ってあげれるか、

ちゃんとした病院を、どう見つけるのか、という……


妻さん

身内の人も、恥やと思って病院に連れていかないことが多いんですね。

そういう人を受け入れてあげられる施設やNPOを作りたい、

って夫に相談したこともありました。


夫さん

あのね……もしかすると……<うつ病の防ぎようってない>のかなって。

すごく絶望的なこと言うけども。結局、がくんと落ちないとわからへん。

その、前兆はあるよ。それを知ってたらいいんやけども、

知らん人は落ちてしまわな、わからへん。



――生きる意味をいくつか用意できていれば、止まれるのかな、とも思うんです。仕事がダメでも、大好きな趣味があるからいいかな、とか……ただ、仕事一筋の人に「うつ病だからキャリアを捨てろ」と言って、聞いてもらえるかどうか。



妻さん

暴れる人もいるでしょうね、それは……


夫さん

……その……なんていうかな、今までの生き方って、変えられへんやん。

なんか、すごくネガティブしか言ってへんねんけど、みんな行くしかないから、

行って、ドツボに落ちるんでしょ。だから、生きている意味を

別で複数、用意しとければいんやろうけど……

「そんな避難訓練みたいなことって、事前にできるの?」っていう。



――そう考えていくと、我々は身内がうつ病の当事者になったから、こうやってうつ病に

ついて議論していますが……その他のリスクに、例えば交通事故や天災については、

考えられてませんよね。


健康で、何も困っていない時に、全てのリスクに対して日頃から考えられるか。

将来、自分が体調を崩した時に、キャリアを捨てられるか。そういった厳しい問いを

日頃から持てるかというと……すごく難しいです。



夫さん

妻も、絶対うつにならないからって、新婚の頃は言ってた。


妻さん

言ってたけど、パニック障害なったからね、見事に。

……誰でも当事者になりうる、災害のようなもんなんやけどね。


夫さん

ほんま、うつは個人に対する災害やわ。個人に起因してんねんけど、

国土の上に住んでるから地震にあうのと一緒で、その生活にのってるから

起こってしまうねん。これは、どうしようもないことかもしれへんから、

リスクとか知識をふだんから調べておいて、すぐ逃げれるような

場所や、情報があれば……


妻さん

主人がおかしくなった時、自分はすぐ病院をリサーチして、

行動できたのが功を奏したと思うんです。おろおろしてたら、

この人は死んでただろう、って思います。リサーチはすごく大事です。


私は夫にどう反論されるかも、わかってたんで、ここなら鉄格子ないよ、

ここはご飯が美味しいけど、とか……そこまでやれるエネルギーを、

持てるかどうかなんですよね。もし子供さんや、お姑さんがいたり、

いまと違う環境にいたら、できたかはわかりませんが……



――<実際に危機的状況が起こってしまった時の緊急時の対応>と、

<危機的状況が起こる前の、社会への啓蒙>と、どちらも大事なんだな、と感じます。



夫さん

難しいな……


妻さん

難しいと思う。うつ病になってしまった人への対応やガイドブックはつくれても、

なる前に止められるかどうかは、難しいと思う。


夫さん

誰かが気づいて止めたとしても、「はぁ、何言ってんの?」って。

まだ何も出てない時に言ったって……



――「たしかに体調は悪いかもしれないが、キャリアを捨ててどうしろっていうんだ?

私の尊厳を奪うのか?」となるでしょうね。



妻さん

「あなた責任取れるの?」みたいな反応が来るでしょうね。



――それでも、深い部分で社会の考え方を変えていかないと、と思うんです。

<うつ病は再発率が高い病気だ>とよくいいますが、それは、

<うつ病から回復した人を、また同じストレス環境に戻そうとする社会環境がある>から

再発してるだけじゃないのか、と思うんです。

……個人的な意見で、データ等があるわけではない話ですが。



夫さん

……でも、その中じゃないと、生きていけない状態になってしまっているよね。



――そうです。だからこそ、「そうじゃなくても生きていけるよね、って誰かが言ったり、考えたり、場をつくったり……健康な時に10秒でいいから、考えてもらえないか……

って思うんです。



妻さん

周りの理解、理解力やね。24時間テレビみたいに、一瞬だけ

スポットライトが当たって、話題になるようなんじゃなくて……


……ちょっと話がズレるんですけど。

うつ当事者の中には、すっごく、お金に困ってる人も多いです。

私たちは借金もしたけど、もっと困ってる人も、たくさんいてはる。


市役所に行って相談すれば、なにかしら対策を教えてくれるんです。

でも、「市役所は敷居が高い、何課に行けばいいのかわからない、

なにを言われるか怖くて行けない」と、躊躇されてる方も多いのではないかと。


住む所に困ってるなら、市営住宅や町営住宅の申請。

税金が払えないなら、国民健康保険の減免、国民年金の免除の申請を出すように

職員さんに教えてもらいました。生活保護の相談もできるし、

いのちの電話のパンフレットがもらえたりもします。

障害者年金に関しては、精神科病院なら主治医に相談したら

たいてい答えてくれはります。困ってたら、まずは相談してみてほしいです。


……私も苦労して、すこしずつ知っていったんやけど。

それに、パニックになった状態で書類を書くのは、ものすごく大変でした。

書き方が全くわからへん。それでも、やらんとあかんかった。



――お二人は辛い時にパートナーが支えてくれましたが、たった一人でなんとかしないと

いけない人も多いと思います。精神疾患を抱えてる状態で、健康な人がやっても大変な

手続きや、診療プランについて、考えて行動しないといけない。周囲の理解や変化が

必要だと思っていますし、うつサポ。をつくった理由でもあります。



妻さん

病気のせいで家から出られない、布団から起き上がれない人もいるわけで。

実家に帰ればええんやけど、帰られへん人もいる。

そういう状況の人がいる事を1人でも多くの人に知ってほしい。


夫さん

うつって、まだ最近の病気……ここ20年くらいでしょ。


妻さん

まだ発展途上なんかもしれんね。


夫さん

まだみんな、なじみがないねん。

名前は知ってるけど、それがどういうものかって。

周りの無理解とかな……無理解がけっきょく、知識やねん。



――<無理解が、知識>……確かに、そうですね。



妻さん

うつの人って、どうしても根暗な印象を周りに与えてしまうみたいで、

会社の人にも言われたんですよ、辛気臭いとか、うつオーラがでてるとか、

見てるだけでうっとうしいとか。


それで、大丈夫か、しんどいんか、旦那がうつやもんな、

って言ってくれたのは一人だけやったんですよ。言われることが全部、

刺さるんですよ、近寄られたらうつが感染るからあっちいけ、

とか、平気で言う世の中なんですよ。


夫さん

それって、20年前の話?


妻さん

ううん、最近。

「うつの人は暗いし、うつるから、関わり合いたくない」って。



――逆にそういう人へ、<関わらなきゃいけない>とも、思います。その人に情報を

あげないといけない。知ってもらう、対話して……血の通った人間が生きていて、

必死に悩んでるんだと。目の前にいて苦しんでいるのに、それでもわかってもらえない……どうにかして伝えなくちゃいけない、と強く、思います。



妻さん

情報を、種を蒔く作業なんですね、いま。

たぶん、それが5年後、10年後に花開いたら、

社会は少し優しくなってるかもしれない。いきなり花は

咲かないと思うんです。種を蒔き続けないといけない。


夫さん

いいこと言うやんか。



――はい、素晴らしいことです。いつかみんなが、優しくなれるように。



妻さん

だから私はツイッターで、自分にできる範囲の人たちに情報を、種を蒔いてるんです。


夫さん

うそやん、僕のことディスってるツイートばっかりやのに……!


妻さん

あれは……だから「見るな!」言うてん!





――(笑)でもほんとうに、大事ですよね。元気な時に、無理のない範囲で、関わって、

知ってもらうこと……



妻さん

情報をまき続ける。そして、みんなが情報を吸収していって、

優しい人間になってくれたらいいんちゃうかなぁ……最終的にはね。


夫さん

難しいなぁ。知識をまくのはできるかも知らんけど……

それを吸収してくれるかどうか。感情移入してもらえるかどうか。



――すごく難しいことです。情報を広げるためには、当事者が抱えている辛さ、

ある意味においては、<自分たちの弱さ>を自己開示し、伝える必要があります……

自分たちはこういう弱さを持ってるんだよ、という物語を広げるには勇気がいるし、

世間には広がっていきにくいように感じます。



妻さん

みんなハッピーエンドが好きやからね。

「自分の旦那はうつじゃなくてよかった」って平気で言われたこともありますし。



――困っている人のために立ち止まってやれない強さなんて、まったく意味のない、

からっぽの強さだと私は思います。「弱さを受け入れられる強さ」を我々が持って、

それを広げていくことが大事なんだと、前回の取材で学びましたが、いま改めて、

強くそう思います。


……今日は、本当にいろんなことを学ばせていただいたと感じています。

取材を受けていただいて、ありがとうございました。




妻さん&夫さん

いえいえ、ありがとうざいました。





「⑮:取材を終えて」へ、つづきます。



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