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【特集取材】うつサポートは「搾取」か、「献身」か? ⑪

更新日:2018年7月13日

◆11:希望の始まり◆



――これは、お二人がご自身で書いたグラフを重ね合わせたものなんです。



夫さん

……あー、そういうこと。



――新婚の頃、近しかったんですが、大きくずれていって……



妻さん

あー、そういうことか。




――不妊治療を続けられている時、妻さんは不幸せで、夫さんは幸せだった。

ここはある意味、妻さんが夫さんに、幸せを貸している、

夫さんが妻さんの幸せを<搾取>してしまっている時期ではないか、と。





――でもその先で、幸せが逆転します。







――ここでは、妻さんは夫さんの不幸せに気付けていなかった。

ある意味においては、妻さんも、夫さんの幸せを<搾取>していた。



そうやって一方が幸せな時、一方が不幸せな時代が続いてきた……のですが、

この1、2年は、ふたりの幸せが、いっしょに、寄り添っているように見えたんです。






――これは、お二人が、<お互いの幸せを交換できるようになった>からなのではないでしょうか?




妻さん

…………


夫さん

…………




――これはただの偶然で、一時期だけ綺麗にそろっているだけかもしれません。でも、私はこのグラフには希望があると思ったんです。


ずっと隣にいるのに、すれ違い続けてたお二人が、なんとかそれを埋めようとして、踏ん張って、やっとお互いの幸せについて理解して、補いあい始めている。


……でも、まだ妻さんの方は、幸せが足りない、夫さんに貸しがある状態なのかもしれません。夫さんの幸せ度累計は「1,113」、妻さんは「885」……妻さんはまだ、夫さんと同じ幸せ度を得てはいないようです。



もちろん、あいまいな主観を数値化して比べているので、正確なことはわかりませんが。




妻さん

うん……


夫さん

…………




――そんなお二人が、3年後くらいまでのグラフを書いたらどうなるのだろう……と。

私は、それがすごく知りたいと思っています。もしかしたら、お互いがお互いの幸せを

願うような、2人とも幸せな日々が始まる、一歩になるんじゃないか、と……





妻さん

……え? ここでいま、未来のグラフを考えて、書くってこと?


夫さん

……うーん。


妻さん

……私は書けるけど。……どうする? 考えられへん?


夫さん

……書けないよぉ。


妻さん

見えない……先が見えないってことでしょ?


夫さん

うーん……


妻さん

そやなぁ……更年期障害も私、あるかもしれんもんなぁ。


夫さん

そういう話かよぉ?


妻さん

それによって感情が揺さぶられるやん。体調のあれはあるよ。

まぁでも、いま生きてるので精一杯やから……っていうのやったら、

書けへんやろな。3年後やろ、3年後なぁ……

私は、うまく行ってたら、開業してるやろうけど……書ける?


夫さん

……わからん。




――予想は、立たないでしょうか?




夫さん

……だって、いままで、数年先のことは、わかってなかったやないですか。

自分は預言者でもないし、これ書いて、意味、あるのかなぁ。




――私は、すごく意味があると思っています。というのは、いままで未来のことが

考えられなかったのは、ご病気でそんな余裕もない、緊急事態だったからだと思うんです。


例えば、火事で家が燃えている人に、「来年どうされる予定ですか?」なんて聞いたら、

そんなこと知るか!って怒られて当然だと思います。緊急事態の時に、未来のことなんて

考えている余裕がない。


でももし、いま夫さんの体調が回復してきて、未来について考えていただけそうなら、

それは希望の種になるかもしれないと、私はそう思っています。




夫さん

……うん……ううん……うん。


妻さん

想像できないってこと?


夫さん

……うん、想像できないな僕。病気なんかなぁ。


妻さん

私は開業が目標やけど、あなたの目標って何?


夫さん

ない。


妻さん

あなたの目標は、<生きること>やもんなぁ。

じゃあ、生きることの幸せを、なにか……


夫さん

……あ! ひとつあるなぁ。診察がなくなることやなぁ。


妻さん

あぁー。




――診察、ですか?




夫さん

4週間に一回、病院行ってるやないですか。

あれがなくなることくらいやな、いまんとこ……




――もし、診察をなくすことが目標であれば、それを書いていただくことが、

希望の始まりなのかな、と私は思います。




夫さん

…………


妻さん

……どう、書けそう? ……寝てる?


夫さん

考えてるんだよ! ない頭、絞って。


妻さん

深く考えると、抜けられへんちゃう?


夫さん

フィーリングでいいって言うんかい?


妻さん

私はそれを大事にしてる。


夫さん

まじかい……





妻さん

直感力をね。自分の野生の勘を信じる。


夫さん

いや、僕は思うねん。2020年にな、

たぶん日本の経済あかんようになりようねん。で、仕事なくなんねん……


妻さん

そのころ私、開業してるかもしれへんしな……


夫さん

それで……



――書いていただけるようであれば、お互いに伏せた状態にしていただけますと。

……あの、希望とか、大層なことを言ってしまいましたが、オリンピック後に

何があるかなんて、誰もわかりませんし、気楽に書いていただければ……(笑)




夫さん

えぇー。そんなことでいいのかい?




――ええ。大企業の経営者も、わりと適当な未来予想図を出して夢を語って……

それで皆があれこれ頑張れるんなら、いいんじゃないでしょうか。(笑)



夫さん

……うぅん……



妻さん

はい、書けました。



――ありがとうございます。





――夫さんは、もうしばらくお時間が必要そうですね。

……そういえば、事前取材で、妻さんにボディケアの方法を教えてもらいましたよね。

それからちょくちょく、風呂上がりに彼女をボディケアするようになったんです。




妻さん

あー。それはええねえ。




――彼女、寝たきりの日々が長かったので筋力が低下してるせいか、

冷え性があったんです。足をボディケアするようになって、それが和らいだみたいで。


コミュニケーションにもなるし、体調も良くなるし、すごくいいなと思いました。よかったらぜひ、オススメのボディケアの方法を教えていただけませんでしょうか?




妻さん

ええですよー。




 


その⑫へ、つづきます。



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