◆⑦:取材を終えて◆
− 存在しないものを、イメージしてみることについて −
ついさっきまで私は、今回取材した音声を、最初から聞き直していました。
みんなでカレーとタルトを食べているときの音声を聞いていたのですが、私たちの声には、なじみのカフェでのひとときを過ごしているような、穏やかな心地よさがありました。
取材を終えて、私が和泉さんに対して感じたことは、「和泉さんは、ケーキをつくっても、カレーをつくっても、お店をつくっても、ぜんぶが和泉さんなんだ」ということでした。
誰かを笑顔にするために、独創的なイメージを立ち上げて、
どうやったらそれが実現できるのかを、いろんな人たちを巻き込んで、探し求める人。
私は、そんな和泉さんの「マイノリティと非マイノリティが相互理解できるサードプレイスをつくる」という理念に非常に共感し、それがどんなものなのか、いろんな方に紹介できるような記事を書きたいと思っていました。
ですが、和泉さんからお話を聞き、記事を作成していくうちに私は、Cafe メム が
どんな場所なのかは、言葉で説明すればするほど、ずれていってしまうのを感じています。
Cafe メム は、あらゆる人が訪れ、みんなでつくっていく、お客さんと従業員の境目さえ
あいまいな、良くも悪くも<可能性のかたまり>のような、まだ生まれていないお店です。「正しく説明しようとすればするほど、大切なことを言いそびれているような、そんな感覚になるのも当然だ」と、私は気づきました。
私は飲食店経営については素人ですし、和泉さんのプロジェクトが本当に成功するのか
どうかについて、確かなことは何も言えません。
ですが、<マイノリティと非マイノリティの人々が相互理解できること>は絶対に必要だと思っていますし、それを実現するためにできることがあれば、できる限り協力したいと考えています。
そうやって考えていく中で私は、
「もし、本当にそんな場所が実現するとしたら、そこがどんな場所なのかを
イメージする人が増えることが必要なのではないか」と思うようになりました。
だから、この記事をここまで読んでくれた、
<マイノリティと非マイノリティが相互理解することができる>未来を願うみなさん。
どうか少しだけ、それと同じコンセプトを持った、まだこの世界に存在していないCafe メム について、想像してみてください。
その店では、甘くて辛いカレーの香りがいっぱいに広がっています。

もうすぐ開催されるイベントの打ち合わせをしている人たちの、
活気に満ちた楽しい笑い声が聞こえてきます。
「誰かに、自分のことをわかってほしい」
という思いを抱えた人が、勇気を振り絞って、店の扉を開く音が聞こえます。
そのお店でしか食べられないケーキは、いったいどんな味がするでしょうか?

あなたにとって、その場所は、どんな場所でしょうか?
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この特集取材は、これでおわりです。
さいごまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
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